「使える」チャットボットを作るためにはどうすれば良いか?
1、チャットボットの期待と現実
”チャットボット元年”と言われ注目された2016年、チャットボットは、およそ15年前に起こったウェブからモバイルアプリへの移行よりも大きなパラダイムシフトが起きると期待されていました。実際、その年にFacebook上だけでも10万以上のチャットボットが構築されましたが、大半のチャットボットは期待されていたような成果をあげることはできませんでした。
いったい、何がいけなかったのでしょう。
元々、人がコンピューターを使う時にはコマンドを手入力をする必要があったため、一部の人しかコンピューターを使うことができませんでしたが、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)により、ほとんどの人が簡単にコンピューターを使うことが可能になりました。
現在のモバイルアプリは何十年にも及ぶGUIに関する研究や検証により、非常に精錬されたものになっています。
人が新しいサービスや製品に変えようとする時には強い動機付けが必要となります。例えば、今使っている製品やサービスよりも、料金が安いか、機能が良いか、使い易いか、そしてカッコ良いか、などです。人により重要視する点は異なりますが、何かを変える時にはエネルギーや時間やお金が必要になり、これらを消費してでも新しい製品やサービスを利用したい!手に入れたい!思わせることができると、新しいサービスや製品を使ってもらえるのです。
つまり、当時はユーザに強い動機付け与えるほどのチャットボットが少なかったということになります。
2、チャットボットは本当に使えないのか!?
チャットボットが期待ほど使われていないという結果だけにフォーカスすると、ユーザの期待に応えられていないというのが正しい見方となります。しかし、それが「チャットボット=使えない」ということではありません。もちろんAIをはじめとした技術やUIが未成熟であったことは否めませんが、それだけではなくユーザの期待が大き過ぎた(ギャップが大き過ぎた)ということではないかと考えています。
AIブームや、漫画やアニメで描かれているロボット型の登場人物により「AI=人のように何でもできる」という印象が植え付けられ、それによって生まれた過度な期待がユーザを落胆させてしまったのではないでしょうか。では「使えるチャットボット」はどうすれば作ることができるのでしょうか。
3、使えるチャットボットにするために
AIは万能ではないことを理解する
1点目は「AIは何でもできる」ではなく、一つのことに特化した事柄において大量なデータを基に人よりも遥かに優れた判断や分類をすることができるものであると理解することが重要です。現在のAIは特化型と呼ばれており、人のようにオールマイティに何でも理解し、処理を行えるAIは存在していません。
AIとチャットボットエンジンを組み合わせる
2点目はAIとチャットボットエンジン(会話シナリオなど)を上手く組み合わせるということです。チャットボットは文字通り、チャット(文字)でのやり取りが大半となるため、ユーザの意図(何が知りたいか、何がしたいか等)を汲み取ることがモバイルアプリに比べ格段に難しくなりますが、AIの特性を生かしユーザの意図解釈を行わせることで会話のような振る舞いをすることが可能になります。
また、FAQチャットボットの場合にはQAを学習させたルールベースのAIを利用することで言い回しの違いなど吸収することが可能になります。そしてAIが判断した結果(合致度やスコア)によりチャットボットエンジンがユーザへの返信内容を変えることで自然な会話に近づけることができます。考え方としては人と人が会話した場合と同じように曖昧な質問の場合には聞き返しやAなのかBなのかといった条件の絞り込みを行うことで会話が成り立つようになります。
チャットボットを育てる
3点目は「チャットボットを育てる」ということです。私が導入を検討されているお客様に提案する時には必ず、「導入はスタートです!」とお伝えしてます。Webサイトやモバイルアプリではユーザの行動を分析し、それに基づいてコンテンツ内容やUI/UXを向上させています。これと同様にチャットボットもユーザの会話を分析し、足りていない情報(回答できなかったFAQ等)を追加、ユーザの意図を解釈する例文の追加、スキルの追加(社内利用であれば、申請や会議室予約等々)を行うことです。
上記3点を対応していくことでユーザは会話ができる便利なアシスタントツールと認識し、「使えるチャットボット」を作る(育てる)ことが可能となります。また、AIは日々進化しており、特性を上手く利用することでより良いチャットボットを作ることが可能になっていくことでしょう。
プロフィール
kiyoharu
エンジニア歴20年。チャットボットに悩みを聞いてもらいたいと思う今日この頃です。
執筆者情報:
CTC Benefitter(ベネフィッター) 開発チーム
CTC コミュニケーションデザイン部 CXソリューション第3課
社内業務のDXを推進するサービスとして豊富な機能と様々なシステム・WEBサービスとの連携を可能とした AIチャットボット Benefitter を提供しています。チャットボットの活用方法や導入事例を伝えていくため、情報を発信しています。