少子高齢化による人口減により、働き手の数も減少していくことが予想されています。
政府が「働き方改革」を提唱し、産業界に限らず、官公庁でも教育界でも業務効率化や生産性向上が叫ばれています。
Webサイト上での接客など、マーケティングやセールスで効果を出せるイメージが強いチャットボットですが、実は、業務効率化を実現できるツールでもあります。
本コラムでは、チャットボットに期待できる業務効率化の効果と、活用の際の注意点をご紹介いたします。
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チャットボットを活用することで、次のような業務効率化が期待できます。
多くの企業で、顧客や見込客向けに、よく寄せられる質問と回答をまとめたFAQを作成してWebサイト上などで公開しています。しかし、顧客側はそれらを確認せずに問い合わせてしまうこともよくあります。その結果、コールセンターでは、同じような単純な質問に回答しなければならないことで、業務効率が悪化しているケースも少なくありません。
顧客や見込客からの問い合わせ対応をチャットボットで行うことで、オペレーターが対応しなければならない問い合わせ数を削減でき、業務効率化につながります。また、その分、オペレーターの人件費を削減することも可能です。
間接部門とよばれる総務部や情報システム部では、社員からの問い合わせ対応に時間を取られているケースが少なくありません。しかも、問い合わせ内容には似たようなものが多く、何度も同じような回答を繰り返すという業務効率の悪いものになりがちです。
チャットボットを社内ヘルプデスク用に活用することで、社員からの問い合わせにチャットボットが自動応答してくれるようになり、担当者は、チャットボットでは対応できないような難易度の高い問い合わせのみに対応すれば済むようになります。
さらに、チャットボットが手続きに必要なフォーマットファイルやワークフローへ誘導するように設定すれば、問い合わせる側の業務効率化にもつながります。
残業申請などの承認を行うワークフローには、承認を行うはずの上司が外出中だったりすでに退勤していたり、社内にいてもなかなか気づかず承認が間に合わなかったり、普段あまり申請しない内容だと、必要以上に時間が取られたりといった課題があります。
また、承認する側にも、タイミングによっては、承認のためだけにわざわざパソコンを起動させなければならず、手間に感じることもあるでしょう。
こうしたワークフローをチャットボットで行うことで、スマートフォンで申請・承認が行えるようになり、場所や時間を選ばずに実施できるようになります。また、プッシュ通知で承認者が気づきやすくなり、スピーディに承認されるようになるでしょう。
さらに、辞書機能などと組み合わせれば、ワークフローに関する不明点を社員が自力で解決できます。
業務効率化を目指してチャットボットを導入する際には、どのようなチャットボットを選べば良いのでしょうか?
たとえば、社内ヘルプデスク業務をチャットボットで効率化したい場合、既存の社内チャットが浸透していれば、これと連携できるチャットボットを選ぶことで、利用が自然と促進されるでしょう。
ほかにも、スケジュール管理システムやワークフロー、RPAなどと連携できると、チャットボットから連携先につなげることで、疑問を解消した後に申請や手続きなどまで一気通貫で行えます。たとえば、パスワードの初期化などの場合、手続き自体も自動化してしまえば、より高い効率化が期待できます。
また、コールセンター業務を効率化したい場合は、既存のCRMなどと連携できると、より高い業務効率効果が期待できます。
このように、業務効率化のためには、既存のツールやシステムと連携できるチャットボットを選ぶことが大切です。ID連携機能などもあると、なお良いでしょう。
ワークフローなどで活用する場合、チャットボットから申請があったらプッシュ通知してくれる機能が付いていると、承認漏れの低減や、申請者を待たせる時間の削減につながります。
カレンダーとの連携や通知予約などの機能もあると、さらに利便性が高まるでしょう。
業務効率化を目的としたチャットボットの導入・活用で注意したいポイントをご紹介します。
業務効率化を行いたい具体的な場面を絞って優先順位をつけ、その活用シーンに向く機能が搭載されたチャットボットを導入しましょう。
たとえば、極端な話ですが、コールセンター業務の効率化を実現したいのに、BtoB向けにWebサイト上での接客に特化したものや、社内の業務自動化に特化したタイプを導入しても効果は期待できませんし、複雑な質問が想定されるのに、ルールベース型(シナリオ型)を導入すれば、力不足でしょう。
導入目的を達成するために必要な機能が揃ったチャットボットを選定する必要があります。
質問に対して提示される回答が、ユーザー(社員や顧客)の求めるものでなければ、満足度は低下してしまいます。登録するデータは十分な量を用意する必要があります。
選択肢を選ぶ「シナリオ形式」の場合も、ユーザーの意図に合った選択肢が一つも表示されなければ離脱されてしまいます。十分な選択肢を用意する必要があるでしょう。
チャットボットは便利なツールですが、万能ではありません。AI型チャットボットであっても、あらかじめ学習させておいたデータや、運用中に受けた質問と回答以外の内容を問われても、的確な回答は返せません。
適切でない回答を提示したまま放置すれば、ユーザー(社員や顧客)の満足度は低下し、チャットボットは次第に活用されなくなってしまうでしょう。それでは、導入目的が果たせません。
たとえば、ルールベース型(シナリオ型)の場合、質問の内容が登録したデータの中になかった場合は「オペレーターが対応するのでお待ちください」などと表示してオペレーターにつなぐといった切り替えが設定できるようなチャットボットを導入するのがおすすめです。
チャットボットは、社員の業務効率化を図るのにも有効なツールです。
チャットボットの活用で、コールセンター業務や社内ヘルプデスク、ワークフローなどの業務効率を改善し、人は人にしかできないような複雑な判断が必要な業務に専念したり、残業時間を削減したりできるようになります。
導入の際は、既存システムやツールとの連携、有人対応への切り替え機能などに着目しながら、自社の目的に合ったものを選定してください。