社内問い合わせ自動応答ボットはチャットボット利用で最も主流かつ有名なものの一つです。利用目的が明確なボットであれば、ユーザーの利便性向上や導入部門の負荷軽減に役立ちます。
自動応答ボットは最終的には様々な用途に活用できるパーソナルアシスタントボットに成長させることができますが、初回導入時は具体的な改善指標を一つか二つだけ設定した上で、早期導入による実用の中でボットを調整していくことをお奨めします。
最初から高い期待と大きな工数を投入しても、なかなか成果を出せずにランニングコストだけがかかり、結局ボットの利用を中断する、という事例も存在するためです。
下記の要素への対応をあらかじめ確認しておくことで、費用対効果のバランスがとれた効果的なボットを早期に導入して活用することができます。
ボットに自動応答させるにはコンテンツ(この場合はFAQのリスト)が必要です。既に社内サイトでFAQを公開している場合や、担当者のマニュアル・Excelなどで管理されている場合、ボットサービス側にインポート機能があればすぐにボットを稼働させることできます。
FAQが存在せず属人的な応対となっている場合は、業務担当者によるFAQ整備の時間確保が必要になります。FAQを作成する外部サービスもあるので委託することもできますが、データを提供したり内容を確認するための時間は必要です。
また、日常の電話、メール、チャットのログなどから学習してFAQを自動登録できるサービスもありますが、登録内容を校正したり内容を確認する作業自体が発生することには変わりはありません。前者は短期間で負荷を集中して導入を早める場合、後者は担当者の業務負荷を短期的に増やせない場合に検討することになります。
業務上可能であれば、最初に負荷はかかりますが、業務担当者がまず100問程度のFAQを一気に整備してボットの公開を前倒しにすることをお奨めします。実際のユーザーの利用状況を確認しながらコンテンツの整備をした方が、現場に即した効果の高いボットを早期に実現できます。
ボットのパフォーマンスを確認する指標をあらかじめ設定しておき、導入時の要件定義や仕様の明確化や導入後の改善に役立てます。企業内の環境や導入目的により様々な指標を設定できますが、正答率、利用率/初回選択率が代表的です。
ユーザーが入力した質問テキストからユーザーが望む回答を表示できる率です。テキストや単語の表記ゆれ、言い回しの違いへの対応は、ボットサービス(AI)の性能に依存します。準備したFAQに対する別の言い回しや用語を使ったテスト用のテキストをあらかじめ準備しておくと、複数のボットサービスの比較が効率的に行えます。
なお、現在のAI仕様では、FAQが増えるにしたがって一問一答での正答率は下がる傾向にあります。単純な一問一答での性能比較だけではなく、ユーザーが入力する途中で質問候補をサジェスト(オートコンプリート)したり、「適した質問ではない」とユーザーが回答したら類似した質問の一覧表示するなど、ボットならではのインタラクティブ性を活かした機能も含めて、1セッションでの正答率を確認することをお奨めします。
なお、初回導入時は正答率が9割を超えるぐらいまで精度を高めないとユーザーのボットへの評価が悪くなり、後の利用率に悪影響がでます。事前の精度テストを支援する機能を持つボットサービスを選択すると導入負荷を下げることができます。
利用率はボット利用対象者中何人が利用しているか、初回選択率は情報を照会する時にどの手段を最初に選択しているかを測ります。電話やメールでの質問に慣れているユーザーはボットを導入してもすぐにはボット利用に移行してこないことも多いため、この指標を改善していく工夫が重要です。架電ユーザーをSMSやチャットツールでボットに誘導するIVRのようなサービスを連動させると役立ちます。
また、ボットによる問合せチャネルの追加は、それまで質問をしてこなかった層(あきらめていた層)の取り込みにもなるため、ボットの利用率増大と電話やメールの利用率減少は必ずしも連動しません。電話やメールの利用率を下げるためのユーザー行動分析は、ボットの利用ログだけでは不足していて、ユーザー属性や意図をアンケートで確認していく必要があります。
ボット導入前にユーザーの問合せ状況を確認しておくことをお奨めします。また、ユーザーにアンケート通知が可能なボットサービスであれば準備と集計の工数を削減することができます。
社内問い合わせ自動応答ボット用の安価で簡単なサービスも複数提供されており、ボットの導入自体の敷居は低くなっています。下記の準備を行ったり、該当する機能を持ったサービスを選択肢にいれることで、各サービスの試用・比較を短期間で行い、選択したボットの社内公開を早めることができますので、ぜひお試しください。
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